2014年06月29日
ギターの経年変化に関して(アコギ)
このテーマには色々な思い込みや、幻想と向き合う事でもあるので、 何度も手を入れることになると思います。
これ以外にも、合板、魂柱、ビンテージ等のテーマも考察していくべき課題ではあると思います。
木は何で構成されているか?
木材の主成分は多糖類であるセルロース分子が作るミクロフィブリル(約50%)やヘミセルロース(含キシラン・グルコマンナン、約20%)、リグニン(広葉樹約20%、針葉樹約30%)を主成分とし、副成分としてテルペン、タンニン、リグナン等を含む
骨格となる長鎖状のセルロースは木材に強さやしなやかさをもたらし、網目状のリグニンは細胞を接着させながら硬さ・曲げ強さを与える。分岐状のヘミセルロースはセルロースとリグニンを結びつける機能を受け持っている
と、云うのはwikipedia の、受け売りですが、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの3つの成分と水の4つの要素と考えて良いと思います。
つまりこの中の要素が時間的な変化により何が起こるのか、コレが判れば古い楽器が良く鳴る様になる事の答えに近づける筈ですよね。
実際には完成時が一番良い状態に近い筈なのに、実際にその楽器が本当の能力を発揮するのは、そこから30年以上経ってから・・・
実際には、そこまで持たない様な楽器もありますが、それはここで語る事では無いので割愛しますが、
ギター作りを始めた当初はともかく、 作り手の中に何年も経った楽器の方が鳴ると云う事に気付くんですよね。
既にバイオリンやクラシック楽器で知られている事では在ったとしても。
問題はここからで、何年も持たせる為の作り方を研究し取り入れていく訳です。
交換すべきパーツは交換し易く。
まあ難度は高くても、基本的にはすべて分解できる様に接着材も選択されています。
この楽器が作られてからの過程を見越した制作が、やはり70年代の日本製の楽器には足りていないモノが多かった様に思います。
しかし、最近は資本主義の魔の手が全てを飲み込み、新しい楽器には長い年月を隔てて完成すると云うビジョンが薄れている様に思います。
そう云えば、最近の楽曲に入っているアコギの音も昔と比べるとかなり悪いモノが増えてきていますね。
録音環境が簡単で楽になった事によって、収録は簡単になってきたのですが、実際に生音を録る為には、少々物足りない環境である事と、収録する者や、演奏者がアコギの良い部分の音を元々知らないと云う事が挙げられると思います。
シンセサイザーが登場した時代に、冨田勲がオーケストラをシンセの多重録音で再現すると云うレコードを作り一世を風靡しましたが、それは元の音源や楽器の事を知り尽くしていたので出来た事であり、知らなければ出来ない事です。
現代ではオケの楽器の音階も知らないプロが溢れかえっていますが、如何なものでしょうか?
結果が良ければ文句はありませんが、ダサい音を聴かされるのは迷惑ですね。
まあ、その辺りの事は置いておくとして、木材で作られた楽器は木の性質からして、この性質の変化に伴い良く鳴る様になって行く訳ですが、セルロースは針葉樹の方が広葉樹よりも多く含んでおり、針葉樹では木材質の23~33%、広葉樹では16~25%となりますので、広葉樹の木材の方が経年変化によって鳴るという件に関しては少ない傾向にあるようです。
しかし、だいたいの場合スプルース(松系)や、メイプル(楓)の様な針葉樹で制作されるケースが多いですから、知識としてだけ認識しておけば良いと思われます。
よくエレキが鳴り始めた等と云われる事がありますが、その場合は木の変化では無いでしょう。
分厚い広葉樹のボディに何の変化が起こるのでしょうか?
アコギは1mm~最大でも3mm以内の厚みの板が反響によって振動するのですから、根本が異なります。
ハウリングやフィードバックの問題を考えれば、ボディはアコースティックギターの様な振動はしない様に工夫されて作られています。