2014年02月20日
MARTIN D-45
第38弾は MARTIN D-45 です。
*追記しました。
2020/3/26 動画ではちゃんと録音出来ていないD-45
確か1993年製のレギュラーモデルです。
出来が良いといっても、コピーモデルばかりが集まった処で然程の意味も為さない為に、一応楽器を始めた頃に憧れていたD-45を手に入れようと、御茶ノ水を歩き回り、手に入れたいモノと手に入れられる予算を考えながらチェックしてましたが、結局購入するまで半年ぐらい時間が掛かりましたね。
古いモノはまた違うのでしょうが、現行のギターの中でもD‐45は倍音や出音が弾いている人間と聴いている人間でかなりの違いが在ります。
弾いてもらうと、簡単に弾いても倍音とその煌びやかな感じは圧倒的に感じられるのに、自分で弾くと倍音は聴こえるものの他人が弾いたものと比べるとかなり落ちます。
反対に低音は直接バックやサイドから、身体に響いてきますので、弾いている本人は低音は聴く側よりもより強く感じられます。
とにかく高音域の成分は前方に飛ぶ様です。
倍音といっても、今まで紹介して来たものとは違って、通常に感じる倍音の更に上の音程の響きが在り、他の響きと混ざり合うので深く広がりの在る音と云うんでしょうか、厚みと深みの次元がチョット違いますね。
コード弾きで多数の弦を鳴らす事で、音の混ざり合う具合が最大に引出されるので、ジャーンと弾きたくなりますね。
これを手に入れて、弾き手と聴手で印象の大きく異なる楽器が在ると云う事が初めて判った気がします。
これは、ホントにある程度アコギに触れていた上で比べない限りきっと判らない気がしますね。
このギターが他とどう違うのかと一言で云うとすれば、脆い、ということでしょうか。
トップに最良の材料を使用し、それをギリギリの強度まで調整する事で初めて出るサウンドがある様ですね。
日本製でトップが脹らむ様なギターはありませんし、そうならない様に作るのが仕事のあり方であると考えているのだと思われますが、その先に別の答えが在る事に気付く事は出来なかったのでしょうかね。
まあ、現段階ではそう云う事を乗り越えた日本製のギターに出逢ってないと云う事だけだとは思いたいですが、日本の湿度の問題等を含めて考えると、そこの強度の問題と云う事があるが為に、マーチンの答えにたどり着きづらい環境であるかもしれません。
これだけの押し出しが在って存在感が凄いのに、本体は驚く程軽いですね。 やはり、鳴らす為にはそうなるのでしょうね。
しかし、その反面サスティンが非常に長いです。
力学的にはそうならない筈ですが、自分の出している音に共振してサスティンが伸びている様に思えます。
しかし、困った事に自分にとってマーチンのネックはとても相性が悪く、日本製のものと比べるとかなり弾きづらいネックですね。
幅も広くコードを押さえ易かったり、しっかりしているのですが、サイズが合わないんですかね。
コードストロークのサウンドが凄すぎるせいで、単音弾きのソロや他のプレイとの落差が大きくて、弾く側としてはそのギャップやコードの響きに負けない様な音作りに精神的にやられてしまいそうです。
実際には高音域を活かしたプレイはTF-150の方がやり易く、低音域を活かしたければYAMAKIの方が使い易いと云えます。
しかし、あまりにもコードストロークが凄すぎるので、手に負えない感じとも云えますね。
聴手側からの判断を最終的にはしたいところですが、結局自分のプレイですからね、これはめんどくさい事になりました。
そう云えば弾き手、聴手による違いとかも、NET上にも書籍にもありませんね。
同じに聴こえているんでしょうかね?
コードひとつで判りますから、誰でも判る簡単な事の様にしか思えないのですが、どうなんですかね?
自分は弾き込む事で音が良くなるとは思えないので、このギターもセルロース化が進んでいく事による強度UPと鳴りの変化を楽しみたいと思っています。
まだ、作られて20年ですから、もう10年程度はしないと完成したとは云えない状態ですからね。
アコギは本当に変化していきますから面白いです。
予算的に、この先には行きたくても行けないですねえ。
しかし、云える事は楽器を活かした演奏をしない限り、他の楽器と然程の違いは判らないという事です。
やはり、ギリギリの調整で作られてるモノは、こちらもそれに合わせてプレイする事が求められる様に思えます。
高いお金を出した上に、演奏方法を縛られる様なこの威圧感には、結構ギターには慣れてたつもりの自分にも押潰されそうな感じですね。
何にも気にせずに弾けますが、それだと45の音だと伝えきれないんですよね。
古いギターはもっと凄いのかなあ?
そのせいで、弦の太さも弦高もピック、ピッキング全てベストを求められるし、その上で45のサウンドが成り立っていると云う事が理解できるので、ギターに弾かせられてる感覚が異常です。
凄いサウンドが頑張れば出ると云う事は天からの恵と云えるべき、信じられない喜びではあるのですが、こんなに疲れる楽器もありません。
つまり、金だけの力では最高の音には近づけないと云うのは、素晴らしい事実です、それを活かす事ができる腕がない限り、イイ楽器からも大した音は出せないって事と、イイ楽器を選ぶのも、腕がなければ出来ないってことですね。
*おまけ*
購入に半年位かかりましたが、D-45が世界で一番多く集まっている街が御茶ノ水、神保町界隈なんですよ。
外国の楽器屋には1本も無いのが当たり前で、こうやって比較ができるのも、この街ならではの事でもちろんお膝元のアメリカにもそんな場所はありませんよ。
それだけ客が居ると云う事なんでしょうが、耳と腕はどこまで来ているのか? カタログや文面が大好きな国民ですからね、自分の観察力を磨くと云う事をもう少し考えてもらいたいものです。
ピックガードは埋込みではなく、塗装の上から貼ってあるものです。
購入してしばらくしてから、指板の高音部分のインレイに浮きがあり、購入3ヶ月以内だったので販売店に修理を頼みましたが、D-45の修理をできる職人さんは非常に少ないとの事で結局修理に3ヶ月くらい掛かりました。
きっとギターを正面向きで倒した事で起きた問題だったのでしょうが、他の日本製のものと比べると非常に脆く感じます。
実際に修理が上がってきましたが、余り出来が良いとは言えず結局自分で治すハメになってしまいました。
D-45の修理代は法外なので、保証期間内に試してみたのですが、修理期間内のものだからかどうかは判りませんが、ガッカリさせられましたね。
インレイはアバロンの筈ですが、最近のS-YAIRIのYD-41で使っているモノの方が派手で綺麗ですね。 YD-41のアバロンはラミネイト加工されたものでしょうね、ラミネイトされたアバロンは深く色合いが濃くなりますね。
目の通ったローズウッド、材料は非常に良いものを使っています。
これは反対側
バックはもちろんブックマッチ
ローズの突き板にメーカーインレイが入ります。
ヘッドにはダイアモンドヴォリュート
ペグはヘッドのラインに合わせた角度に取り付けられています。
インレイはネックブロック周りや、サイド、バックにも及んでいます。
もともと、ミディアムのゲージに合わせていたのでしょうか、自分が使用する弦には少し深すぎるナットです。
でも、メーカー出荷時であればこんなものなのかな、マーチンと云えどもナットの調整は最終的にはユーザーでしょうからね。
少々ホコリが取りきれなかったですが、D-45の内部をお見せします。
サイドには割れ止めが同じローズウッドの薄板でされています。
単板の良いギターになってくると、弾き始めて楽器が温まってくると、ローズウッドの香りが漂ってきます。
TF-150もかなり香るのですが、D-45は半端じゃないくらいに香ります。
ローズウッドの由来が判る瞬間ですが、それ故にローズの善し悪しもある程度香りで感じられるという事ですね。
合板のフィルムみたいな板からは、香って来ないですね。
シリアルNOはネックブロックに製品NOと一緒に刻印されます。
よく見てくださいね。
ネックブロックの杢目を。
横に入っていますね、これはテールブロックも横向きです。
モーリス、YAMAKI、フェンダー、は縦でした。
MASTERは写真では確認出来なかったので、再度見てみましょう。
この向きがなんの意味をなしているのかは、現段階では不明ですが、これまでのコピー品やいろんな書物やNETでも、誰も触れていませんし気付いていないようですね。
観察力無いのかなあ?
カタログトークが好きなのは判るけどさあ・・・
トップの裏はスキャロップブレイシングになっています。
かなり細かく調整されています。
ブリッジ裏には、トップ材と同じ材質の材料で補強されています。
他のメーカーはブリッジと同じ材質で補強されるケースが多いですね。
TF-150はローズウッドで補強されています。
トップを少しでも軽くする事と、少しでも鳴らすと云う事の一部分なのかもしれませんね。
観察力、大事です。
裏はこうですが、トップはブリッジ部分が膨らんでいます。
日本製に楽器ではそういった事はありませんでしたので、多少焦りますが、ここまでギリギリの調整をする事で初めてあの音が出せる楽器になるのでしょうね。
あとは、やはり材料の質ですね。
もとの樹木やシーズニング、品質管理、全てが違っているとしか言い様がありません。
単純にスプルース単板と云う言葉や、シトカ、ジャーマンとか云っても、日本人、アメリカ人というレベルの分け方ですから、全てを言い表せる訳が無いんですよね。
*追記 2020/3/26 動画ではちゃんと録音出来ていないD-45
チョット気になって、NET動画でD-45のモノを探してみました。
中古販売店、ユーザー、等そこそこありました。
自分が観たもの総て、ちゃんと録音出来ていませんでした。
コード弾き等の音量が大きい際に、倍音の高音域が鳴り過ぎて高音部だけ歪んだ状態になってしまっています。
録音は通常、ハンディカムかスマホだと思いますが、内臓タイプのマイクで機器側がリミッターを持つ状態で、音が大きければ入力レベルを下げて調整する、自動のタイプだと思いますが、人間の声をベースに設定されている事もあり、倍音が強烈に鳴っていても入力オーバーにはならない様です。
過去に仏壇に置いてある鈴(おりん)を録音した際
アタック音は良いんですが、共振して音が響く時に録音された音は歪気味になりました。
高音域でマイクの部品と共振する事も多少はあるでしょうが、どんなマイクでも録音してみると響いてる音は歪み気味になる為、距離を離して入力を下げ気味にした記憶が有ります。
D-45を他のギターと同じ様に録音すると、録音できません。
新しいレギュラーモデルでも70年代のモノでも、コードをバーンと弾いたらもうアウトで、録音された音とその場で聴いている音では違うものになってしまっています。
部屋の響きも倍音部分ではかなり廻ってしまい嫌な感じになっています。
収録した人たちは破壊力の有る倍音に満足しちゃってるんでしょうかね?
録音されている音とその場で弾いた音違うと思いますけど。
実際にはエレクトレットコンデンサーマイクを使ってデッドな環境が必要です。
演奏の流れを決めて、VUメーターはMAXでは無く、有る程度抑えて調整する必要があります。
D-45は、やはり他のギターとは違っていて、倍音が異常な形で出ますし、コード等で更に共振し有って音圧も変わります。
この特徴を理解し活かさない限り、このギターを持つ意味は有りません。
最近の音楽では、アコギの音が良く無いとどこかでも書きましたが、
このレベルで問題無いと感じているのなら、仕方が無いですね。
良い音、良い楽器、って、何なのでしょうかね?
コメント一覧
1. Posted by 山の手十人 2014年02月22日 22:59
いつぞやの件に関して、アコギのこのお話、とても深いです。
私も経年変化には特に、アコギ、クラギには相当あると思います。セルロース化の話も製作者から聞いたこともあるので興味深いです。楽器の評価という点では、弾き手を選ぶ楽器というのもあると思います。店舗では、スタッフに弾いてもらい、遠くで客観的に聴くことは有益な方法です。私はそうしてます。
私も経年変化には特に、アコギ、クラギには相当あると思います。セルロース化の話も製作者から聞いたこともあるので興味深いです。楽器の評価という点では、弾き手を選ぶ楽器というのもあると思います。店舗では、スタッフに弾いてもらい、遠くで客観的に聴くことは有益な方法です。私はそうしてます。
2. Posted by SEAMAN 2014年02月23日 17:59
山の手十人さん こんにちは
いえいえ、これはD-45に関してに絞ったつもりです。
しかし、アコギの変化に関しては書く事は在れども、どう書くかが非常に難しいですね。
山の手十人さんも、人に弾いてもらうのを聴くんですね、ある程度以上の生楽器はどうしても必要な作業だと思います。
買う買わないを忘れて客観的に音を聴く事が間違いを起こさない唯一の方法かもしれません。
いえいえ、これはD-45に関してに絞ったつもりです。
しかし、アコギの変化に関しては書く事は在れども、どう書くかが非常に難しいですね。
山の手十人さんも、人に弾いてもらうのを聴くんですね、ある程度以上の生楽器はどうしても必要な作業だと思います。
買う買わないを忘れて客観的に音を聴く事が間違いを起こさない唯一の方法かもしれません。
3. Posted by 山の手住人 2014年02月23日 19:09
そうですね、生楽器の難しさはそこにあると思います。聞きかじりで恐縮ですが、生楽器の制作者が言っておられたのですが、耳元で大きくなる(音量の大きい)楽器は、遠鳴りしにくく、あまり鳴らないと感じるような(倍音の少ない)楽器はステージから遠鳴りするとか。
一度は人に弾いてもらって、遠くで聴くことはポイントであると私も強く思っている次第です。
一度は人に弾いてもらって、遠くで聴くことはポイントであると私も強く思っている次第です。