2013年12月28日
KAWASE MASTER M75
第26弾は KAWASE MASTER M75 です。
日本初のマーチンギターを販売を行った事と、当時最高のクオリティのギターを制作している会社である、カワセ楽器さんのギターです。
吉田拓郎がマーチンをまだ買えなかった頃に使っていた等の逸話が幾らでもある伝説のメーカーとも呼べるカワセ楽器ですが、現在も神田小川町でスキーショップに囲まれながら、同じ様に楽器を扱っています。
MASTERシリーズはカワセ楽器のアコースティックギターの製品で大量生産ではない為に年間60台程度であったらしく、このM-75の画像はネット検索では出てきません。
購入時にはネックが起き気味で弦高の問題も在ったのですが、長期間ネックを休めたところ、使える角度に収まってきました。
なんでそんな事してるのかと云うと、このギターはトラスロッドは入っているのですが、マーチンが昔使っていたSQネックと云う、四角のロッドをネックにぶち込んで絶対曲がらないと云う事を前提に設計したシステムを使っているので、ロッドを廻すとかで調整すればイイという訳では無いんですね。
現在のコンディションはかなりイイですよ。(弾き手としての判断です。)
低音はD28の様なパワーが在って、硬いアタックの強い音です。
この硬い低音と云うのは、今までで経験が無い様に思います。
ブレイシングがスキャロップ化されていないのに、時間の経過で鳴る様になってきた事でこの音質にたどり着いたのかもしれません。
スキャロップブレイシングのギターの方が多く持っているせいなのかもしれませんね。
ドレッドノートで単板、この造りで3~40年経過していますので、丁度イイ時期ですね。 楽器として完成される時期です。
やはり、かなりマーチン的なサウンドで、知らずに弾いたらD28だと思ってしまうでしょうね、それも最近のものではなくて。
こうして、紹介の為に写真を撮ったり、情報の確認の為に検索をすると、かなりの時間をそちらに取られてしまうのですが、自分の楽器を再度見つめ直す事が出来、再発見がたくさんあります。
楽器を幾つかお持ちの皆さんにも自慢の楽器の紹介をしてもらえたら、嬉しいですね。
最近思うのですが、木材などの善し悪しは過去に名器に使用されたという事もありますが、実際にはその時代に手に入れ易くて、性能が良いモノが選定されている訳で、ハカランダやホンジュラスマホガニーやアディロンダックスプルースがベストだと考えるのは短絡的な発想でしかないと思います。
昔はデータも少なくアフリカンマホガニーを見つけたとしても、ホンジュラスマホガニーを購入するよりも高価になった可能性もありますし、性能も上の材料も在るのかもしれません。
だからと云って、最近見付けられたの材料が全て良いと云っている訳では在りません。
楽器が完成するのは、制作後30年は掛かりますから本質的な判断は未来の人に任せるしかありませんが。
何を基準に楽器を評価しているのか、そこが問題です。
それは、自分の耳で聴く以外はありません。
そして、自分の腕が上がる事によって耳は鍛えられ、合坂のギターとの差も判らなかったのに、腕を上げることで、合板ギターから三味線臭いペラペラしたアタック音を感じる事ができる様になると思います。
しかし、問題なのはこう云った楽器の場合、店で弾いてもさっぱり判らない事が多いです。 実際には自宅で他のギターと比べてみたりしないと判らない事だらけです。
思い込みや自己満足も結構ですが、楽器の作り手の気持ちを考えると、判らない奴に弾いて欲しくないじゃないですか。
巧くなくても、楽器に対して真摯に向き合って、嘘の無い音を弾くと云う事が大事なのかと思います。
特にアコギは嘘が無いモノが多いですからね。
エレキに関しては滅茶苦茶な情報が当り前の様に正論ぶって大手を振ってまかり通っているので、酷い事だらけですが(アコギもそんなに変わらないか?) 実際に弾いて判るのはアコギです。
エレキはアンプが5割以上の比率で音の主導権を持っていますし、ギター本体では弦が5割以上の主導権を持ってます。
そんな物を知らないアンプで5分弾いたからって、本質的な事が判る人はそれ程居るとは思えませんね。
まあ、エレキの話は別の時に・・・・
ボディはドレッドノート、材料は単板です。
大きめのブリッジボードにブリッジを差し込む溝があるのですが、溝は端から端まで一直線に入っています。
端が余っているのは、交換したブリッジが専用のモノでは無い為に足りなかったのでしょう、実際には端から端までブリッジが在り、角の傾斜に合わせて摺り合わせしてあるはずですから。
内部の刻印は薄れてきて見えづらい状況です。
WELL MADE BY MASTER MUSICAL INSTR
と、書いてあるようです。
何故かスノーフレイクスのインレイです。
通常はドットがほとんどなのですが、これも他では見た事がありません。
綺麗なローズウッドの板です。
バックもローズウッド、ブックマッチなのがわかります。
近くで見ると、塗装が薄く目地が出ています。
ローズの目地が浮き上がってくる様な日本製のギターは初めてです。
先程、単板と云いましたが、何とネックのヒール部分は合わせてあります。
それなりに高価で手作りのギターでこう云ったモノは初めてです。
コストパフォーマンスを上げる為や材料が無くて行っているモノは前出のFender SAC-07 の様な場合には考えられるのですが、MASTERでと云うのは不思議です。
カワセ楽器で聴いてみようかなあ?
反対側にはストラップピンが打ってあります。
ヘッドはシンプルにMASTERのインレイとバインディングのみ
このロゴはM-100等では同じデザインのモノを見る事ができます。
M-100にはこの突き板に装飾用のインレイが入ります。
もう一つM-50と云うモノも在り、バインディングはありません。
M-100は10万、M-75が7万5千、M-50が5万と云う、ドレッドノートのラインナップだったそうです。
ヘッドの裏、しっかりしたマホガニーですね。
この頃のマホガニーは本物です。
マホガニー属には以下の3種
マホガニー キューバマホガニーまたはスペインマホガニー
オオバマホガニー ホンジュラスマホガニー
メキシコマホガニー
ですが、最近は数が少ない事とホンジュラスマホガニーはワシントン条約で、ブラジリアンローズウッド等と同じく守られており、サペリや 、フタバガキ科のラワンの一種もフィリピン・マホガニーとして、ネック材等に使われています。
2本目にSA-2000を買う時にネックがラワンみたいで嫌だった事を今だに思い出しますが、やはり近い種類なんですかねえ。
ラワンって曲がりそうで嫌ですけど、学校の工作で本棚とか作って釣っても曲がってましたもんね、まあ、学校ではシーズニングした材料を使ってる訳じゃあないけど。
写真は腕だと云うのが判る2枚、同じ部分を撮って、ピントもだいたい合っているのに、塗装割れが目立つ写真と目立たない写真です。
騙されますよね。
ピックガードは塗り込みになっています。
この部分の傷は剥がそうとしたのでしょうかね?
普通はこの場所から剥がそうとは思わないと思いますが・・・
M75と云う型式と1115と云うシリアルNOがネックブロックにスタンプされています。
内部を見ると、サイドの割れを修理した跡があります。
MASTERはサイドに割れ止めはありませんが、この修理跡が単板の証でもありますね。
素晴らしいのは、このナットの仕上げ。
巻き弦の約半分のところで抑えてありますね。
弦がすべて埋まっている様なギターをお持ちの方はナットを交換調整する事を御薦め致します。
後加工なのかもしれませんが、ナットの下側がヘッドの面の角度に合わせてあるので元からの可能性は高いですね、しかし、70年代でほとんどまともな鉄弦ギターを国内で生産していない時期にこのナットが作れたとしたら驚異的としか云い様がありません。
MASTERの専用ケースです。
丸いバッジにロゴが入っているのですが写真ではちゃんと写せませんでした。
コメント一覧
つい懐かしくて・・・79年にM-100Hを新品で購入し、4ヶ月前まで所有してました。
素晴らしい音色でしたが鳴らなかった本家D-28が多少の調整で鳴り出したのでM-100は売却しました。
http://music.geocities.jp/tochiropeta
M-75と100がどう違うのでしょう?私が所有していたM-100と同じに思えます。
ブリッジのサドルは溝に対して寸足らずが純正仕様です、高さが違うスペアサドルが2個付属してました。
焼き印は同じモノですね、画像を拝見した限りボディの内側もラッカーで塗ってあるようですね。
私の個体も塗ってありました、マスター独特の堅めの低音の要因ではと思います。
ポジションマークのダイヤモンドフレークは購入時のオプションでした、ネックサイド・ヘッド周りのバイン
ディングも有る無しを選べました、価格は変わりません。ただボディのヘリンボーンは追加があったよう
です。
ペグは当時ですからマーチン同様USAグローバー102Cでした、なんとボディエンドのストラップピンがフ
ェンダーのエレキギター用が付いていました、しかもゴールドでした、何というセンスの無さでしょうか!
ネックヒールはseaman様同様に付け足しモノ、これはマスター全ての仕様のようです。(特注除く)
KAWASEのバッチ付ハードケースはなんと2万円の別売、当時私は学生でしたのでなめられたかな?
値引き無しの12万円での購入でした。
音は文句ナシですがあれやこれや気に入らないところがあり、友人に譲り渡しました。
他愛もない書き込みです、失礼しました、m(__)m
自分もSA2000を買った時ケース代2万か1.5万取られました。それはさて置き、ブリッジのホールはあの状態なんですね、丸のこで一気に切り抜く感じですかね。
ネックヒールもですか、材料を惜しみながら作っていたんでしょうかね。
まあ、少し新しいですがモーリスTF-150も同じ造りでしたから、そうした造り方をするメーカーや工場が当時から在ったのでしょうね。
M100とM75では、刻印とペグくらいしか違いのないものや、結構派手なM100等も少数ですが見る事ができます。しかし、明確な違いとなると販売価格以外の情報は目にしたことがありませんね。
M100はネックヒールが削り出しで材料の質が良くてペグが違うものかと、想像していましたが、全く違うようですね。
これはKAWASEの2代目に聴くしかないかもしれません。
ロゴのデザインはやはり時代の変化でしょうか?
自分のものは75年製らしいので古いタイプなのかもしれません。
自分の主観ではKAWASEはコストパフォーマンスがかなり高く、重要だと思わない部分に関してはコストを削って行くと云う姿勢が感じられます。
それにネック等はSヤイリの様にマーチン並に幅を取る事もなく、手が小さくても弾き易いネックです。
塗装も非常に薄く丁寧ですし、ナットの仕上げに関しては、世界的にも類を見ない完成度で、当時から、ここまで楽器を理解して制作出来ていることは、俄かに信じ難いくらいです。
MASTERとの別れは惜しいですが、D28との付き合いを満喫してください。
ブリッジの溝はルーターの位置決めををして、数回往復すればできるの
で作業工程の省略だと思われます。
ロングサドルではないのも面倒くさい両端の加工を省略したのでしょう。
私は売却時にロングサドルに交換して渡しました。(売却先は友人です)
http://music.geocities.jp/tochiropeta/index2.html
ナットは注意して見てませんでした、確かに現在のナット加工のセオリー
通りに仕上がってますね。(3段目の画像は国産カジノのナットを自分で
交換した際の画像です)
購入時にお店の説明では木材の材質が違うと言う事ですが、SEAMAN
様のM75を見た限りでは違いがわかりません。
私(元)のM-100のトップ板のセンター貼り合わせ部付近は年輪が消え
かかっています、この部分多少地肌が汚いので専門ではないので視察
ですが、本柾目でしたら結構高価な材になりますね。
サイド板はブックマッチですがSEAMAN様のM-75もそうですね。
70年中頃まではハカランダを使ったM-100があったそうです、ハカラン
ダが使えなくなってM-75との差がなくなったのでは?
サウンド面は2004のD-28との比較ですが、低音の音量はM-100も結構
大きいですがさすがに本家の方が圧倒的です、ただ乾いた粒立ちのい
い堅めのカチッとした低音はMasterならではでしょう。
注文から5ヶ月待ちで入手した時には本当に嬉しかったのですが、歳月
が経つと(実体がわかると)愛着がなくなってしまいました。
私は”国産ビンテージ”に懐疑的です、確かに高品質なギターもあります
が古ければ何もかにも「国産だから良い」には大変違和感を覚えます。
SEAMAN様の記事は率直に書かれていて大変参考になります。
これからもちょくちょく拝見させていただきます。m(__)m
PS 売却先は友人ですので恋しくなればいつでも・・・(笑)
木材を伐採してから、約5年で水分の放出と狂いがだいたい出て使用可能となりますが、そこから大きな板材に加工したあと、直ぐに使用せずに取っておくモノも在ります。
その材は、そこから更にシーズニングされ、より狂いの無い材料になります。
これは、実際にギターになったあとの木材を見てもわかりません。
特に日本は高温多湿なのでシーズニングは重要です。
更に言えばネックのシーズニングがしっかりできていないと、トラスロッドで調整出来るものと比べ、SQネック等の調整できないネックには大事な要素だと考えます。
自分もジャパンビンテージには呆れてますし、海外のビンテージ信仰も半分位はお金の匂いしか感じられずに哀しくなります。
実際には一本一本毎に異なるものですからね。
しかし、自分の様にネックを交換するタイプの人間には現在まで狂いが出なかったネックには価値が在り、これからも狂いが出ないモノでしょうから、優良な部品として使える事はありがたい事ではあります。
martinを購入予定でしたが10本ほど弾き比べた結果、1番鳴りが良かったこの個体に決めました。
bluesを好む小生にとって最良の選択をしたと思います
生涯の相棒になりそうな予感の個体です